3月12日午前3時59分、震度6強の直下型地震が、長野県最北部に位置する栄村を襲った。震源は深さ8キロ、
地震の規模は推定マグニチュード6.7。半日前に起こった東日本大震災に誘発されたかのように、「その日の深夜」だった。
村内外を結ぶ道路は雪や土砂でふさがれ、孤立した小滝集落の住民は、ヘリコプターで避難所へ移送された。
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栄村は、「豪雪の村」として知られている。自然の豊かさと多彩な暮らしの営みが評価されて「にほんの里100選」にも 選ばれた美しい村。しかし、震災による雪崩や土石流で、山々が崩れ落ち、瓦礫が地面を覆い、一瞬にして様相を変えてしまった。 家屋は51棟が全半壊、JR飯山線はレールが宙吊りになり、県道の路肩50mほどが崩落。 多くの村民の暮らしを支える田んぼには亀裂が入り、水路が山ごと崩壊するなどの被害で、今年の作付けも危ぶまれている。
にもかかわらず、東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故の影で、栄村の被害状況は、
十分全国に伝わっているとは言い難い。東北の被災地へは既に数百億円に上る義捐金が集まっているが、
栄村への直接の義捐金は1億5千万円程度だ。警察庁緊急災害警備本部がまとめた「東日本大震災の被害状況と警察措置」では、
長野県は対象地域に含まれず、内閣官房震災ボランティア連携室のプロジェクト「助け合いジャパン」にも、
栄村の名前はなかった(4月8日現在)。いまのところ、栄村に「東日本大震災」の義捐金が配分されるかどうか、
確かな見通しはない。
村人たちにとって、今一番不安な問題は住宅だ。約2300人の村民の平均年齢は56歳。年金生活の高齢者は、家を直す資金を
借りることは難しい。家が直せたとしても、主な生業である農業が復興できなければ、どんなに村が好きでも住み続けられる保証はない。
この村が従来の生活を取り戻すには、一時的な物資ではなく、生活と産業の基盤を復興していく長期的な支援が求められている。
震災前の美しい青倉の棚田。今は雪をかぶっているが、雪解け後に、水路の点検や田の底に地割れがないかの調査が必要だ。